【お知らせ】「人」明日へのストーリー「日本も、世界も同じ、はじまりは信頼関係から」［高知県］

2021.08.11

2017年度1次隊／マラウイ／栄養士　中平　有（高知県）

【動機は不純、けれども活動は純粋に】
小さい頃は、考古学者になって世界中を旅したいと思っていました。しかし、自身が成長するにつれてその想いは霞んでいき、高校を卒業する頃には「今は手に職が求められる時代」と考え、管理栄養士免許を取得するために理系の大学に進みました。
JICAの協力隊事業には元々関心がありましたが、その関心の源は海外で生活をするための手段としてであり、純粋なボランティア精神からくるものではなく、また栄養士として参加しようという気概もありませんでした。
JICAのボランティア事業説明会に参加した際に「資格を持っているのなら、その資格を活かした職種で応募するべきです。誰しもが持っていない資格、誰しもができない活動で、開発途上国で苦しむ人たちの支援ができるのであれば、それはとても素晴らしいことですよね」と言葉をかけてもらいました。この言葉が、これまでの協力隊参加の動機を恥じるとともに、純粋に「栄養士」という職種でのボランティアとして協力隊を目指すきっかけとなりました。

【赴任当初の栄養士としての意気込み】
マラウイ共和国でヘルスセンター（行政が各地域に配置する病院）に派遣された私は、学校での食育活動や地域での調理実習という手段により、地域住民の栄養状態を改善することが最優先課題と意気込んでいました。
着任当初は、現地住民が知らない新たなアイディアで、栄養改善のアプローチ方法を示すことが協力隊員としてのあるべき姿と考えていました。しかし、、、

【本当の課題はなにか、課題解決の手段はなにか】
病院業務の一つに、低栄養の認定を受けた子どもに対してピーナッツペースト状の補助食品を提供する「栄養改善プログラム」があります。しかしながら、ピーナッツペーストの管理が不適切であり、病院の職員が持ち帰ってしまうことが常態化していました。
健やかな子どもの成長を支援する制度やプログラムは存在しているにも関わらず、病院の管理体制が機能していない－それこそが、マラウイという国に根付く課題を映し出していました。

いち協力隊員が病院の管理体制に介入するために、最優先で行うべきことは信頼の獲得でした。院内で手伝える業務は率先して行い、2年間の派遣期間のうちの時間の多くを信頼獲得のための業務に費やしました。私のことをマンパワーとして病院で働く都合の良いアジア人としてしか見ていない人もいましたが、確実に一歩ずつ信頼が得られたことは確かです。最終的には同僚の協力が得られ、管理体制を厳重にするための提案が採用されるとともに、在庫数の管理と発注の適正化を図ることができました。
結果として、これまで頻繁に発生していたピーナッツペースト等の在庫切れがなくなり、本当に必要な子どもたちに在庫が届けられる体制構築が実現しました。

【母親との関係構築も重要なミッション】
子どもに不足しがちな栄養素を補給しつつ、離乳食を家庭で作ってもらうためのキャンペーンとして、離乳食に混ぜる粉末状のサプリメントの全家庭への配布が進められていました。一方で、職員たちは進んで配布せず、また地域の母親たちにおいても離乳食の大切さやサプリメントによる不足栄養素の補給が重要であるとは考えていません。
病院から遠く離れた地域に毎月訪問する乳幼児健診にも可能な限り参加し、母親にサプリメントの活用を義務付けるのではなく、内発的な動機付けを行うことで、母親の離乳食調理とサプリメント摂取の必要性理解を促しました。
帰国する頃には、母親のほうからサプリメントを求め、あるいは使い方についての質問をするようになっていました。地域の母親たちがボトムアップで職員たちに訴え、摂取を持続してくれればと願うばかりです。

【ないものねだりでなく、いまあるものから成果の最大値を】
マラウイ共和国は、各国のドナーからの援助に大きく依存しています。援助物資を適切に末端の地域住民に届ける、かつ物資を最大限活用するためには、マラウイの住民自身が内発的な意思に基づいて、管理や供給を行うことが肝要です。その大切さを伝えるために、まず信頼関係を作り上げることは、日本でも世界でも変わらない基準であると、強く実感しました。
自分本位ではなく相手本位での着眼点を持つことが、国際協力での活動のみならず社会の一員としても、極めて大切なことであることを経験する貴重な機会となりました。
現地の子どもたちが健やかに育つことができるよう、いまあるものから最大限の成果を得られるように願い続けています。

【詳細】
独立行政法人国際協力機構ホームページ＞JICA四国＞「人」明日へのストーリー＞日本も、世界も同じ、はじまりは信頼関係から
https://www.jica.go.jp/shikoku/story/139.html

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